FIRE COLUMN
FIRE6年目の僕が、資産額より先に用意してよかったもの
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FIREを目指していると、必要な資産額を何度も計算したくなります。年間生活費が300万円なら、4%ルールでは7,500万円。そこに税金、社会保険料、教育費、住まいの修繕費、インフレ、相場の暴落を加えると、必要額は簡単に膨らみます。
FIREを目指していると、必要な資産額を何度も計算したくなります。年間生活費が300万円なら、4%ルールでは7,500万円。そこに税金、社会保険料、教育費、住まいの修繕費、インフレ、相場の暴落を加えると、必要額は簡単に膨らみます。
僕自身も30歳でサイドFIREしてから6年、資産と生活のバランスを考え続けてきました。結論から言うと、FIREの不安を減らすために、資産額だけを増やし続ける必要はありません。資産が減ったときに、必要な分だけ働けるという選択肢を用意しておくことのほうが、心の支えになる場面があります。
この記事では、FIRE後の生活費が足りなくなったらどうするかを、理屈だけではなく、実際にフードデリバリーを試した経験と数字をもとに整理します。
必要な資産額を計算しても、不安が終わらない理由
FIREの計算を始めたばかりの頃は、必要額が分かれば安心できると思いがちです。しかし、計算を重ねるほど「まだ足りない」と感じることがあります。
株価が40%下がったらどうするのか。税制が変わったらどうするのか。思ったより長生きしたらどうするのか。家族の支出が増えたらどうするのか。将来起きる可能性を一つずつ足していくと、最初に考えた5,000万円が7,500万円になり、7,500万円が1億円になります。
これは計算が間違っているという話ではありません。未来を完全には予測できないから、資産額だけで不確実性を埋めようとすると、必要額に終わりがなくなるという話です。
不安の正体は、必ずお金が足りなくなることではありません。何が起きるか分からず、起きたときに自分が動けるか分からないことです。ならば、用意するべきなのは「暴落が起きない未来」ではなく、「暴落が起きても取れる行動」です。
FIRE後にまた働くことは、FIREの失敗ではない
「お金が足りなくなったら働けばいい」と言うと、一度会社を辞めた人が再び働けるのか、年下の人に指示されても耐えられるのか、ブランクがあっても社会復帰できるのか、と心配する声があります。
でも、FIREは二度と働かない契約ではありません。FIREの本質は、労働を禁止することではなく、働き方を自分で選べる状態を作ることです。
- 資産が減っている期間だけ、週に数日働く
- 生活費の不足分だけ、小さな収入を作る
- 相場が戻ったら仕事を減らす
- 合わない仕事なら、無理をせず別の方法へ変える
会社員時代と同じように週5日働き続ける必要はありません。再び働くとしても、FIRE前の働き方に戻るのではなく、必要な分だけ労働を使うという考え方ができます。
本当に稼げるのかを、フードデリバリーで試した
もちろん、口で「困ったら働けばいい」と言うだけなら簡単です。FIREして6年目になると、会社員時代の感覚はかなり薄れています。決まった時間に出勤できるのか、年下の人に注意されたときに変なプライドが出ないか、体力が落ちていても動けるのか。自分でも分かりませんでした。
そこで、健康であれば多くの人が始められる仕事として、フードデリバリーを試しました。自転車競技の経験があるわけでも、特別な体力があるわけでもありません。家にあった自転車で、昼のピーク時間だけ稼働しました。
実際の稼働時間と報酬
- 月曜日:およそ3時間稼働し、報酬は7,144円
- 火曜日:およそ3時間40分稼働し、報酬は7,612円
この2日だけで、月に何十万円も安定して稼げると結論づけるつもりはありません。報酬は曜日、天気、地域、注文数、キャンペーンなどで変わります。田舎では同じように注文が入らない可能性もあります。
それでも、僕にとってこの数字には大きな意味がありました。月曜日に7,144円、火曜日に7,612円を、自分の時間と体力を使って生み出せた。FIREして6年経っても、必要になれば動けることを自分で確かめられたからです。
大事なのは月42万円ではなく、必要額だけ稼げること
1日7,000円を30日続ければ月21万円、昼夜の稼働を単純に倍にすれば月42万円です。ただし、これはあくまで計算上の数字で、安定収入を約束するものではありません。
僕が伝えたいのは、毎日自転車を漕いで月42万円稼ごうということではありません。毎月3万円足りないなら、3万円分だけ働けばいい。資産を取り崩したくない半年間だけ働いてもいい。真夏や真冬を避け、動きやすい季節だけ働いてもいい。
FIRE後の仕事は、生活のすべてを差し出すものではありません。不足分を補うために、人生の一部だけを使うものです。必要な額が小さければ、働く時間も小さくできます。
資産が増える安心と、自分で稼げる安心は別物
資産が100万円増えると、口座の数字が増えます。それはもちろん安心につながります。一方で、自分の力で7,000円を稼げたときに増えるのは、数字だけではなく「必要なら動ける」という自分への信頼です。
資産だけを命綱にしていると、株価が下がるたびに、自分の人生まで否定されたように感じることがあります。しかし、資産が減ったら月5万円を稼ぐ、支出を一時的に下げる、別の仕事を探す、といった行動が決まっていれば、暴落は人生の終わりではなくなります。
FIRE前に考えるべきなのは、未来をすべて当てることではありません。予想から外れたときの「次の一手」を決めておくことです。
自分に合う小さな収入源を、余裕のあるうちに試す
フードデリバリーが誰にでも向いているわけではありません。住んでいる地域によっては、農作業の手伝い、観光シーズンの短期勤務、清掃、送迎、オンラインの仕事、経験を教える仕事のほうが現実的かもしれません。
重要なのは、暴落してから慌てて探すのではなく、資産に余裕があるうちに一度試しておくことです。1日だけ働く。自分のスキルを出品する。不用品を売る。ブログや動画を始める。月1万円でも、自分の手で稼いでみる。
その1万円は、金額以上の価値を持ちます。自分は相場に養われるだけの存在ではない。証券口座の外にも、自分の力で作れるものがある。その感覚を取り戻せるからです。
FIREの肩書きを守るために、家族を苦しめない
「一度FIREした人が働くのは格好悪い」「FIRE失敗と思われたくない」と考えてしまう気持ちは、理解できます。長く会社で働き、役職や立場を得てきた人ほど、もう一度新人のように扱われることに抵抗があるでしょう。
ただ、FIRE達成者という肩書きを守るために、家族に我慢をさせたり、資産が減っても働かなかったりするなら、それは自由とは呼びにくい。汗をかいて働くことより、変なプライドを守るために選択肢を捨てることのほうが、よほど危険です。
必要なときに働ける。合わなければ辞められる。支出を下げることもできる。そうした逃げ道があるからこそ、FIRE後の働き方には会社員時代とは違う自由があります。
最後に待つのは、完璧な準備ではなく一歩を踏み出す判断
もちろん、貯金ゼロで会社を辞めろと言いたいわけではありません。生活費を把握し、ある程度の資産を作り、投資先を分散し、生活防衛資金を用意し、家族と話す。ここまでは、きちんと準備したほうがいい。
ただし、すべての不安が消える日を待つ必要はありません。株価、病気、寿命、制度変更。どれだけ準備しても、未来の不確実性は残ります。最後の不安を、追加の1,000万円だけで完全に埋めることはできません。
ある程度まで準備したら、自分なら予想外のことが起きても動けると信じて、一歩を踏み出す。足りなければ働く。合わなければ方法を変える。資産が戻れば仕事を減らす。人生は、一度決めた計画を死ぬまで守るゲームではありません。
まとめ:FIREの安心は、資産額と行動の選択肢で作る
FIRE6年目の僕が資産額より先に用意してよかったと思うのは、必要なら自分で稼げるという感覚です。フードデリバリーで試した2日間の報酬は、将来の収入を保証する数字ではありません。それでも、資産が減ったときに何もできないわけではないと確認するには十分でした。
FIREを目指すなら、必要な資産額だけでなく、次のことも考えてみてください。
- 毎月いくら不足したら、どの程度働けば補えるか
- 自分の住む地域で、無理なく試せる仕事は何か
- 資産がどの水準になったら、支出や働き方を変えるか
- FIRE後も守りたい生活と、手放してもよい見栄は何か
FIREは、労働を一生拒否するための称号ではありません。自分の時間の主導権を取り戻し、必要なときに必要な行動を選べる状態です。資産額を積み上げることと同じくらい、自分の足で次の一手を選べる準備をしておきたいと思います。
FIRE前に試しておくと安心な小さな実験
退職前に、いきなり働き方を全部変える必要はありません。休日に短時間の仕事を試す、持っているスキルを誰かに提供する、不用品を売る、家計から毎月3万円の収入が減った想定で暮らす。小さな実験をしておくと、数字だけでは分からない体力や気持ちの変化を確認できます。
収入が少なくても、始めるまでの手間、人と関わる疲れ、移動にかかる時間が分かります。その経験があれば、FIRE後に「働けばいい」と言うだけでなく、「自分ならこの方法をこの季節にこの時間だけ使える」と具体的に考えられます。
FIREの計画に必要なのは、未来を完全に当てることではありません。外れたときに、現実的に戻れる道を一つ以上持っておくことです。
参考にした公開note:勢いで会社を辞めてFIREした結果…6年後も生きています【セミリタイア】
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